多宝塔の相輪

   

長保寺多宝塔(国宝)

平成7年に内部の赤外線写真による調査がおこなわれ、芯柱から墨書銘が発見されました。
赤外線フィルムで撮影すると、墨に含まれていたカーボンなどが、肉眼では確認できなくてもハッキリと撮影できます。
銘文には、南北朝時代の正平12年(1357)とはっきり書かれており、この時建立されたと見て間違いないでしょう。

全国的に見ると、最近になって建てられたものも含めると、多宝塔は300位はあるとされています。
国宝の多宝塔は、全国で6基です。和歌山には、そのうちの3基、高野山の金剛三昧院、根来寺の大塔と長保寺。他には滋賀の石手寺、広島の浄土寺、あまり知られていませんが、泉佐野市の慈眼院にあります。

国宝建造物は探してみると案外と少ないんです。

お寺にある搭は、その内部に仏舎利をまつるのか、仏像をまつるのかで大まかに分類できます。
五重搭とか三重搭は、仏舎利(仏様のお骨)を供養するためのもので、多宝塔は中に密教の本尊である大日如来を安置します。長保寺では、金剛界大日如来をおまつりしています。平安時代の仏像で、多宝塔自体よりもずっと古く、実は長保寺で一番古い仏像でもあります。

 

 

長保寺の多宝塔のてっぺんを御覧いただくと  8個の輪がついています

  

つきだした芯柱に輪や飾りがついていますが、これを相輪(そうりん)と言います。仏搭には必ずついています。
もともとこれは、インドの風習で、お釈迦様など偉い人のお骨を埋めた墳墓の上に日傘を立てたのが起源だろうとされています。インドは暑いですから、お釈迦様の時代から、日傘をさしかけるのは尊い供養だとされていました。

 

   

サンチーのストゥーパ

傘蓋と言うらしいですが、傘をさしかけた様子と言えば、そんなふうにも見えます

 

それが、傘一つだったのが、二つになり、三つになり、多い方が丁寧だろうってことでどんどん増えて、それにややこしい由来能書を適当につけて、今のような形になったのだろうということです。
ですから。基本的には、単なる飾りで深い意味はないと言うこともできますが、仏教の伝統で、搭の上には必ず、相輪が作られるようになりました。

それで、その輪の数がよくあるのが9個ある相輪です。一般的な形とされ、五大如来と四菩薩だとか、唯識の眼耳鼻舌身意・マナ識・アラヤ識・如来蔵識の九識だとか、もっともらしい理由も付けられています。

それが長保寺は輪が8個です。あまりない形ですけれど、実はほかにも例があります。
当麻寺の三重双搭です。なんか、間違って作ったって言われないですんでよかったです(汗)

 
当麻寺三重双塔(国宝)

 


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