75kb

寄合書法華経・心経阿弥陀経       二十九巻
(附 三経筆者極書・筆者略系譜   二巻)

彩箋墨書 (法華経・心経阿弥陀経)縦27.5〜27.9 横71.0〜86.7
江戸前期(17世紀)

紙本墨書 (三経筆者極書)縦27.7 横239.3
     (筆者略系譜)縦27.6 横265.1
江戸前期(元禄3年(1690)

法華経二十八品および心経・阿弥陀経を一巻ずつ数人の筆によって書写したとされる寄合書の一品経である。
長保寺に施入された時期は不詳であるが、元禄3年(1690)に紀州藩2代藩主・徳川光貞が江戸在住の古筆了仲なる人物に筆者を極めさせたところ、鎌倉時代の著名な人物(後白河法王・九条兼実など)が17人にわたって筆写したという鑑定を得ている。そしてその際、外帙および内帙がそれぞれ日厳院大僧正尭憲、妙法院二品親王尭恕によって寄進された。
本品はこの鑑定のように、一見鎌倉時代の装飾経の特徴を備えており、表紙には金銀の霞引き、野毛を掃きちらし、料紙(鳥の子紙)にも金銀の箔や野毛を施している。しかし、筆線が弱く単純な字体に江戸時代の新しい特徴が表れ、墨の色にも変化が見られないことから、江戸時代のごく初頭の古書蹟研究に基づいた作品と推定される。


筆者考記 28kb


和歌山県立博物館「長保寺の仏画と経典」より