1996年10月

こんにちは。
長保寺住職の瑞樹正哲(たまき せいてつ)と申します。42歳、2男1女、です。

 紀州徳川家菩提寺として知られる長保寺は、和歌山県を走る国道42号線より1キロ程東に入った下津町のみかん畑の中にあります。平成7年のNHK大河ドラマ「八代将軍 吉宗」ではロケ地にもなりました。実は私も何回かドラマに登場しているのですが、紀州徳川家が創建したお寺ではありません。元々の始まりは平安時代の長保2年(西暦1000年)に一条天皇より年号を頂いて始まったお寺です。長い年月の間に膨大な数の文化財を生み出してきました。
 本堂(1311)、多宝塔(1344)、大門(1388)は国宝建造物に指定されています。江戸時代になってから徳川家によって建てられた御霊屋(1667)と客殿(1779)は県指定文化財です。寺の背後の傾斜地にある約1万坪の広さの歴代藩主の廟所は大名墓所としては全国一の規模です。境内一円が国指定史跡で、文化庁の指導で保存修理のための環境整備計画が進められています。
 この他に、約60体の仏像、50点以上の仏画を始めとして、経典、絵画、工芸品、古文書、藩主奉納品など、全部合わせると15000点を遥かに超える文化財を今日に伝えています。現在これらの文化財のほとんどは、常温・常湿の保存ができる全国屈指の収蔵庫を持つ県立博物館と文書館に寄託され、調査が継続されています。
 これらの文化財の保存・修理とその調査・研究は、公開・活用されて初めて価値を発揮しますが、意外と認識されていないのがこの公開・活用にかかる費用と危険性です。建造物や史跡の公開には警備と管理に特別な配慮が必要になります。工芸品などを展示するには、紫外線の入らない温湿度が一定に保てる特殊なケースが必要で、取り扱いには高度な専門知識と熟練が不可欠です。長保寺では御霊屋に文化財の展示コーナーを設け、特別注文のケースを設置しております。当然、大変高価な物です。それでも鎌倉時代の仏画などは、寺で所蔵しているにもかかわわず事実上展示できません。古い仏画などは、掛け軸の細かい繊維が劣化してきているため、一回開けて巻き直すだけで取り返しのつかない損傷を受ける場合があるのです。特に近年は各地に新しい博物館や美術館がオープンし文化財の公開展示の機会が増えてきて、今までに無く事故や損傷の危険性が増えてきています。
 文化財の公開の全ての問題点を解消するわけではありませんが、今最も注目すべき選択枝がインターネットの活用です。技術革新のスピードが余りに速いため、インターネットの功罪と将来像について現時点で的確な判断を下す事は非常に困難です。しかし、絵と文字を世界に向けて発信する最も簡単で安上がりな方法である事に間違いはありません。
 私は今200点を超える画像データと4万字以上の原稿を用意して、長保寺の文化財をインターネットを利用して世界に紹介する準備を進めております。インターネットの持つ大きな可能性に挑戦する価値は十分あると思っています。

 今回皆様にご覧いただいておりますホームページは、公開準備されましたものの一部です。随時内容を更新していく予定です。

このページが、皆様が仏教に触れるご縁を助けるものとなれば幸いです。

合掌


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