弘法大師像 一幅
絹本著色 縦110.4 横61.1
室町前期(15世紀)
真言宗の開祖弘法大師空海の生涯については、よく知られているところであるが、奈良時代末期の宝亀元年(774)讃岐国に生まれ、若くして京都に出て学問を修め、延暦23年(804)最澄らとともに入唐、恵果から伝法阿闍梨位の灌頂を受け、大同元年(806)帰国しわが国に密教を伝えた。その後、高野山を開き、教王護国寺(東寺)を真言道場となし、真言宗の隆盛の基盤を固め、承和2年(835)高野山で入定した。
弘法大師の画像は、大師の高弟であった真如親王が真影を模写し高野山御影堂に安置した画像が原本となったもので、椅子式の牀座に坐し、右手は掌を反転して五鈷杵を執り、左手は掌を上にして数珠を執る姿で、椅子の傍らに水瓶と木履を配するという構図である。
長保寺に伝来する弘法大師像もすべて真如様であるが、年代的には本品が最も古く、室町時代前期(15世紀)に描かれたものである。
「寄進帳」には、前出の画像とともに釈迦堂すなわち本堂の什物とあり、また「修覆奉納銀ニ而出来」と添書されているが、伝来は不詳である。また、画像上部の筆蹟は後宇多院(1267〜1324)の宸筆とされるが、その点についても明らかでない。