種子法華曼荼羅図  一幅  
絹本著色 縦116.9 横100.7
室町前期(15世紀)

法華曼荼羅図は、天台四箇大法の一つ法華経法の本尊像である。法華経見宝塔品には、釈迦が法華説法の時に宝塔が出現し、宝塔中の多宝如来が法華説法を聞くために来たとの来意を告げ、多宝塔中に釈迦を招じ入れ、釈迦・多宝が並坐する、とある。この経意をもとに、両界曼荼羅図の構図を採り入れてなったものが法華曼荼羅で、多くは釈迦・多宝並坐の多宝塔を中心とし、八大菩薩が胎蔵界曼荼羅図の中台八葉院のようにとりまき、その外側の二重院にさらに諸尊が配置されるという図柄である。
長保寺伝来のこの法華曼荼羅は、尊形の代わりに標識である梵字、すなわち種子によって表された種子法華曼荼羅図であるが、各院の境界を省略する点が珍しい。
「寄進帳」によると、この曼荼羅図もやはり和歌浦雲蓋院第4代住職憲海が修復を寄進しており、江戸時代以前から長保寺に伝来していた由緒深い曼荼羅であると考えられる。



和歌山県立博物館「長保寺の仏画と経典」より